カーボローディングは本当に必要?反対派の意見を徹底解説

完走への道

私はカーボローディングの肯定派で、レース前には毎回実践しています。

ところが世の中には、「カーボローディングは意味がない」「むしろ逆効果だ」という反対意見も、決して少なくないのです。

しかも、その主張には一定の根拠があります。研究データを根拠にしたものもあれば、体質的に合わない人がいるという指摘もある。無視できる話ではありません。

そこでこの記事では、カーボローディング反対派の意見を、肯定派の私が正面から検証してみます。

私自身、食べすぎて失敗した経験もあるので、その話も正直にお話しします。

読み終わる頃には、「自分はやるべきか、やらないべきか」の判断がつくはずです。

先に立場を明かしておくと、私は運動ゼロから34歳で初フルマラソンを完走し、今は月300〜400km走りながらサブ3を目指している市民ランナーです。フルマラソンは10回以上走り、そのすべてでカーボローディングをしてきました。

反対派の主な主張は2つ

まずは代表的な反対意見から見ていきましょう。よく挙げられるのは、次の2つです。

① 体重が増えて、パフォーマンスが落ちる

最も多い反対意見がこれです。糖質を多く摂ることで体重が増え、その分だけ体が重くなり、かえって走りが悪くなるという主張です。

実際、糖質は体内に水分を引き込む性質があるため、グリコーゲンが蓄えられると同時に体重も増えます。この増えた体重がレース中の余分な負荷になり、特に体重変化に敏感なランナーには不利に働く。そう指摘されています。

数キロ増えて体が重く感じ、予定していたペースで走れなかった」という声も聞かれます。

1kg増えるだけでフルマラソンのタイムは数分変わるとも言われますから、体重に敏感なランナーが警戒するのは当然でしょう。

② 消化器系のトラブルが起きる

もうひとつが、お腹のトラブルです。

レース前に急激に食事内容を変えることで、消化不良や胃もたれ、下痢などが起こる可能性があります。

食事量が増えたり、普段食べ慣れない食品を取り入れたりすれば、胃腸に負担がかかります。それがレース当日の体調不良につながる、という指摘です。

マラソンは、走っている間ずっと内臓が揺さぶられ続ける競技でもあります。ただでさえ胃腸に負担がかかる状況で、スタート前から消化不良を抱えていたらどうなるか。想像するだけでつらいものがあります。

ケンジ(40歳)
ケンジ(40歳)

うわ、どっちも嫌だな。せっかく準備したのに逆効果って、最悪じゃないか。

まちすけ
まちすけ

だよね。でもこの2つ、実は共通点があるんだ。どちらも『やり方を間違えたとき』に起きる問題なんだよ。

私も「体が重い」を経験した

偉そうに検証すると言いましたが、私も体が重くなる失敗をやらかしたことがあります。

原因ははっきりしていて、単純に食べすぎたからです。「カーボローディング=糖質をたくさん食べること」と勘違いして、いつもの食事に糖質を上乗せしていました。

当然、総摂取カロリーは増える。増えた分は、グリコーゲンではなく余計な重さになって返ってきます。

つまり、反対派が指摘する「体重増加でパフォーマンスが落ちる」という現象は、正しいカーボローディングの結果ではなく、食べすぎという失敗の結果なのです。

正しいやり方は、「足す」のではなく「置き換える」こと。総カロリーは変えずに、おかずを減らしてその分を糖質に寄せる。この原則さえ守れば、体が重くて走れないという事態は起きません。くわしい手順はカーボローディングのやり方の記事にまとめています。

消化器トラブルについても同じです。揚げ物などの脂っこいメニューを避け、ごはん・もち・うどんといったシンプルな糖質を選び、前日にドカ食いしない。それだけで、ほとんどのトラブルは防げます。

ちなみに、正しくやった場合でも体重は1kg前後増えることがあります。

これはグリコーゲンが水分と一緒に蓄えられるためで、狙い通りの変化です。増えた水分はレース中に汗などで出ていきますし、そもそも走るためのエネルギーを積んだ結果なので、慌てる必要はありません。

問題なのは、この正常な1kgではなく、食べすぎによる余分な重さの方です。両者はまったく別物だと理解しておいてください。

反対派の主張は「間違ったやり方への警告」としては、とても的確なのです。

体質から見た反対意見

ここからは、体質や代謝の観点からの反対意見です。

こちらは「やり方の問題」では片づけられない、考える価値のある指摘です。

日本人の食生活は、もともと糖質が多い

日本人の食事は、ごはんを中心に、もともと糖質の割合が高いと言われます。だからわざわざ糖質を増やす必要性は低いのではないか、という意見があります。

これは一理あると思います。普段からごはんをしっかり食べている人が、さらに糖質の割合を上げても、体感できる差は小さいかもしれません。

逆に言えば、普段から糖質を控えめにしている人ほど、カーボローディングの効果を感じやすいとも言えそうです。

自分がどちらのタイプかを知るには、普段の食事を振り返ってみるのが早いです。

毎食しっかりごはんを食べているなら、レース前の調整は控えめでも足りるかもしれません。逆に、ダイエットを兼ねて糖質を抑えている方は、レース前だけはしっかり切り替える意味があります。

食後の血糖値が乱れやすい人もいる

日本人は欧米人と比べてインスリンの分泌能力が弱く、糖質を多く摂ったときに血糖値が急上昇しやすい傾向がある、とも言われています。

血糖値が急激に上がると、その後に急降下が起こることがあります。レース前後にこの乱高下が起きれば、パフォーマンスに影響する可能性は否定できません。実際、そうした状態になっていた選手がいるという指摘もあります。

この点は体質による差が大きい部分です。だからこそ、後述するように「本番前に一度試しておく」ことが欠かせません。

ファットアダプトという、まったく逆の考え方

反対派の議論でよく登場するのが、ファットアダプトという食事法です。

これは、脂質をエネルギー源として効率的に使える体に適応させるという考え方。

糖質の摂取を控え、良質な脂質とタンパク質を中心とした食事を摂ることで、体を脂質適応状態にしていきます。サッカーの長友選手が実践していることでも知られています。

なぜ脂質なのか?

エネルギー量が違うからです。糖質とタンパク質が1gあたり4kcalなのに対して、脂質は1gあたり9kcal。しかも体脂肪という形で、体には十分すぎるほど蓄えがあります。

この脂質を主なエネルギー源として使えるようになれば、持久系スポーツでは大きな武器になります。

ファットアダプトを実践している人にとって、カーボローディングは目的と真逆の行為になります。だから反対派に回るのは当然のことなのです。

ただし、この体を作るには時間がかかります。数日で切り替えられるものではなく、数週間から数ヶ月かけて食習慣ごと変えていく必要があると言われています。レース直前に思いついて試すようなものではない、という点は押さえておきましょう。

興味深いことに、長期的にファットアダプトを行っているアスリートと、カーボローディングを行ったアスリートとで、筋肉内のグリコーゲンの量に差が出なかったという報告もあるようです。

糖質だけで、最後まで走り切れるわけではない

もうひとつ、考えさせられる指摘があります。

カーボローディングをしたアスリートも、運動中に徐々にエネルギー源を脂質へシフトさせていた、という話です。筋肉に蓄えられるグリコーゲンには限界があるので、当然といえば当然かもしれません。

つまり、カーボローディングをしても、3時間ずっと糖質だけを頼りに走ることはできないということです。

ここから見えてくるのは、脂質代謝の重要性です。糖質を満タンにすることと、脂質を使える体を作ること。この2つは対立するというより、両方大事なのかもしれません。

ファットアダプトの具体的なやり方については、別の記事でくわしく紹介する予定です。

実際、私もレース中はジェルで糖質を継ぎ足しながら走っています。スタート前にタンクを満タンにして、走りながら補給もして、それでも足りない分は体脂肪から供給される。マラソンとは、この3つを総動員する競技なのだと思います。

ファットアダプトの具体的なやり方については、別の記事でくわしく紹介する予定です。

向かない人の5パターン

反対意見を踏まえたうえで、「そもそもやらなくていい人・やらない方がいい人」を整理しておきます。

カーボローディングが向かないケース
  • 90分以内で終わる競技に出る人
  • 持病があり食事管理が必要な人
  • 胃腸が弱い人
  • トレーニング量が少ない人
  • 脂質中心の食事法を実践している人

それぞれ補足します。

① 90分以内で終わる競技に出る人

カーボローディングが効果を発揮するのは、90分を超える持久系の競技だと言われています。それ以下の時間なら、普段の食事で蓄えられているエネルギーで足ります。

たとえば私の場合、ハーフマラソンは1時間30分を切るので、カーボローディングはしません。いつも通りの食生活を送った方が、体調も整います。

一方で、ハーフに2時間以上かかる方なら、軽く意識してみる価値はあるでしょう。競技時間で判断するのが分かりやすいです。

10kmのレースや、1時間程度で終わるジョギングイベントであれば、まず不要と考えて大丈夫です。「距離」ではなく「かかる時間」で判断するのがポイントになります。

② 持病があり食事管理が必要な人

糖尿病や脂質異常症など、血糖値や食事の管理が必要な持病がある方は、自己判断で急に食事内容を変えるべきではありません。必ず主治医に相談してから判断してください

この記事はあくまで、健康な市民ランナーの調整方法として書いています。健康に関わる部分は、専門家の判断が最優先です。

③ 胃腸が弱い人

普段から胃もたれしやすい方、お腹を壊しやすい方は、食事内容の急な変更が負担になることがあります。食物繊維の多い食品に敏感な方も同様です。

この場合は、糖質の割合を上げる幅を控えめにする、消化のよい食品を選ぶ、といった調整をおすすめします。無理をしてまでやる必要はありません。

④ トレーニング量が少ない人

体質の話ではありませんが、練習量が少ない方は、そもそも消費するエネルギー量が多くありません。そこへ糖質を増やせば、体重増加のリスクだけが上がります。

カーボローディングは、しっかり走り込んできた人が最後の仕上げにやるもの。準備の総量に見合った調整を心がけましょう。

⑤ 脂質中心の食事法を実践している人

先ほどのファットアダプトのように、日頃から脂質をエネルギー源にする体づくりをしている方にとって、カーボローディングは方向性が逆になります。

自分がどちらの戦略を採るのかを決めて、一貫させることが大切です。両方を中途半端にやるのが一番よくありません。

それでも私が肯定派の理由

ごはんを中心とした食事

ここまで反対意見を並べてきましたが、私は今もカーボローディングを続けています。理由は3つあります。

正しくやれば、デメリットのほとんどが消えるから

見てきた通り、体重増加も消化器トラブルも、「足すのではなく置き換える」「脂っこいものを避ける」という原則を守れば、ほぼ防げます。

反対派の指摘の多くは、やり方への警告として受け止めるのが正解だと考えています。

糖質制限が、自分の生活に合わないから

正直に言うと、私は糖質制限があまり好きではありません。糖質は脳のエネルギー源でもあるので、減らすと普段の仕事のパフォーマンスが落ちそうで怖いのです。

また、脂質やタンパク質を多く摂る食事は、胃に負担がかかります。胃もたれしやすい私には、あまり向いていないと感じています。

カーボローディングに向き不向きがあるように、ファットアダプトにも向き不向きがあるのです。

「やり切った」という心の支えになるから

そしてこれが一番大きいかもしれません。準備を全部やり切ったという安心感が、スタートラインで効くのです。

フルマラソンは不安との戦いでもあります。数日間、食事の中身を意識するだけでその支えが手に入るなら、やらない理由がない。それが10回以上のフルマラソンを走ってきた私の結論です。

科学的に効果が完全に証明されているかどうかより、自分が納得してスタートラインに立てるかどうか。市民ランナーにとっては、そちらの方が大事な場面もあると思っています。

まちすけ
まちすけ

もちろん、これは俺の場合の話。もしカーボローディングで限界を感じたら、俺もファットアダプトを試してみるつもりだよ。

自分はやるべきか

判断の目安をまとめておきます。

  • レースが90分を超える/普段から糖質を控えめにしている/しっかり走り込んできた → やる価値あり
  • 90分以内で終わる/持病がある/胃腸が弱い/練習量が少ない → 無理にやらなくてよい
  • どちらか迷う → 本番前のロング走で一度試してみる

最後の「一度試す」が、実は1番大切です。30km走のような長い練習の前に、3日間の食事調整をリハーサルしてみる。それで体調がよければ本番でも使えますし、お腹の調子が悪くなるようなら、あなたには向いていないということが分かります。

これは補給ジェルを本番前に試すのと、まったく同じ考え方です。ぶっつけ本番だけは避けましょう。

試すときは、体重の変化と、お腹の調子と、走ったときの体の重さ。この3つをメモしておくと判断しやすくなります。数字と体感が両方そろえば、次のレースからは迷わなくなります。

まとめ|正解はひとつじゃない

  • 反対派の主張の多くは「やり方を間違えたとき」に起きる問題
  • 体重増加も胃腸トラブルも、置き換え方式なら防げる(私の失敗も食べすぎが原因)
  • 体質や食事戦略によっては、カーボローディングが向かない人もいる
  • 90分以内の競技なら不要。持病がある方は必ず医師に相談を
  • 迷ったら、本番ではなくロング走の前に試してみる

すべてのランナーに当てはまる唯一の正解は、たぶん存在しません。体質も、生活も、目標も人それぞれだからです。

大切なのは、反対意見も含めて知ったうえで、自分に合う方法を選ぶこと。この記事が、その判断材料になれば嬉しいです。

実際のやり方や、私がやりがちだった失敗については、こちらの記事にまとめています。

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