1日の糖質を50g前後まで減らす食事法があります。フルマラソンを走る人間からすると、正直ぞっとする数字です。
こんにちは。カーボローディング肯定派のまちすけです。
レース前は糖質を70%まで増やして走る私にとって、ファットアダプトはちょうど正反対の理論です。
ファットアダプトは、糖質ではなく脂質をエネルギー源にする食事法で、長友佑都選手が実践していることでも知られています。
私自身はこの食事法を実践していませんが、カーボローディングと対になる考え方として、以前からずっと気になっていました。
この記事では、ファットアダプトの仕組みとメリット、具体的なやり方、そして向いている人・向かない人を整理します。実践していない立場からの解説だという点は、正直にお伝えしておきます。

結論|脂質を主燃料にする食事法
- ファットアダプトは、脂質をエネルギー源として使える体に適応させる食事法
- レース後半のエネルギー切れを防げると期待されている
- 糖質を1日50g前後まで大きく減らし、良質な脂質を中心に摂るのが基本とされている
- 適応には数週間〜数ヶ月かかり、レース直前に始めるものではない
糖質を軸にするカーボローディングとは正反対のアプローチですが、目指すゴールは同じです。レースを通して、エネルギー切れを起こさず走り切ること。そのための手段が違うだけです。

糖質を50gってどのくらい? 白米一杯でアウトじゃないの?

だいたい茶碗半分くらいだね。だから白米やパンはほぼ食べられない。それくらい徹底した食事法なんだ。
ファットアダプトとは
脂質を使える体に変える食事法
ファットアダプトとは、体が脂質を主要なエネルギー源として効率的に使えるように適応させる食事法です。
通常、私たちの体は運動時に糖質を優先的に使います。しかし体内の糖質の蓄えには限りがあり、使い切ると「エネルギー切れ」や「ハンガーノック」と呼ばれる状態に陥ります。マラソンで言う「35kmの壁」の一因も、これだと言われています。
一方、脂質は1gあたり9kcalと、糖質やタンパク質(1gあたり4kcal)の倍以上のエネルギーを持っています。しかも体脂肪という形で、体には十分すぎるほど蓄えがあります。この脂質を主な燃料として使えるようになれば、理論上はエネルギー切れの心配が減るというわけです。
体脂肪は、体重50kgの人でも数万kcal分に相当すると言われています。対して筋肉や肝臓に蓄えられる糖質(グリコーゲン)は、フルマラソンを走り切るにはギリギリの量しかありません。エネルギーの「総量」だけで見れば、脂質を使えたほうが圧倒的に有利というのは、理屈としては筋が通っています。

なぜ注目されるのか
糖質を中心とした食事は、現代の食生活では当たり前になっています。私たちの体は、糖質をメインの燃料として使うように適応してしまっているとも言えます。
ファットアダプトは、その流れに逆らって、あえて脂質を使える体に作り変えようという考え方です。持久系スポーツでは近年注目されており、サッカーの長友佑都選手が実践していることでも話題になりました。
糖質とカーボローディングの関係についてはこちらの記事に、反対派の視点からの検証はこちらの記事にまとめています。あわせて読むと、両方の理論の輪郭がはっきりしてきます。

期待される効果
エネルギー切れを防ぐ
ファットアダプトの最大のメリットとされているのが、レース後半のエネルギー切れを防げることです。
糖質をメインの燃料にしていると、体内のストックを使い切った時点でパフォーマンスが落ちます。脂質は体内に豊富に蓄えられているため、脂質をうまく使える体になれば、長時間の運動でも安定したエネルギー供給が期待できるとされています。
フルマラソンやウルトラマラソンのような長時間の競技ほど、この効果が大きいと言われています。
ただし、これはあくまで理論上の話で、個人差が大きいという指摘もあります。

体重管理がしやすい
もうひとつのメリットとされているのが、体重管理のしやすさです。
糖質を抑えた食事を続けることで、体脂肪をエネルギーとして使う機会が増え、結果的に体脂肪が減りやすくなるとされています。
ランナーにとって、体重が軽いことはそのままパフォーマンスに直結します。
ただしこれも、食事量そのものが減れば当然の結果とも言えます。
糖質を減らした分、脂質やタンパク質でカロリーを補っていれば、体重が大きく変わらないケースもあるはずです。この点は、割り引いて考えたほうがよさそうです。
私がカーボローディングで実践しているのは「総カロリーは変えず、糖質の比率だけ上げる」という置き換え式です。ファットアダプトの体重管理効果も、実際には比率の変化と総カロリーの変化がセットで語られていることが多く、切り分けて評価するのは簡単ではないと感じます。
具体的なやり方
ここからは、ファットアダプトを実践する場合の具体的な方法を紹介します。あくまで調べた内容の整理であり、私自身が試した実感ではないことをあらためてお断りしておきます。
栄養バランスの目安
よく紹介される栄養バランスの目安として、脂質を7割前後まで増やし、タンパク質は2割前後、糖質はごくわずかにするという配分がしばしば挙げられます。1日の糖質を50g前後まで減らすとなると、総摂取カロリーに占める糖質の割合は1割にも届きません。
つまり、エネルギーのほとんどを脂質から摂る食事法だということです。糖質を完全にゼロにするわけではありませんが、主食を大きく減らし、その分を脂質で置き換えるという発想に近くなります。急激に比率を変えると体への負担が大きいため、数週間かけて少しずつ調整していくのが基本とされています。

糖質は50g前後まで
体を脂質メインの状態に切り替えるには、1日の糖質摂取量を50g前後まで大きく減らすことが目安とされています。
ただし、この数値には諸説があります。20〜50g程度に厳しく制限する考え方もあれば、100g程度までを「ゆるやかな低糖質」として許容する考え方もあり、明確に統一された基準があるわけではありません。
白米やパン、麺類といった主食はほぼ食べられなくなる量です。代わりに、野菜や全粒穀物、さつまいもなど、糖質を含みつつ食物繊維も摂れる食材を少量ずつ取り入れる形が推奨されています。
正直な感想を言うと、この数字を見た時点で、私には難しいと感じました。仕事のパフォーマンスにも直結する量だと思うからです。
良質な脂質を摂る
糖質を減らす分、良質な脂質を積極的に摂ることが重要とされています。代表的なのがMCTオイル(中鎖脂肪酸)です。
MCTオイルは体内でエネルギーに変換されやすく、即効性のある燃料として紹介されることが多い油です。ほかにも、オリーブオイルやアボカド、アーモンドやくるみといったナッツ類が良質な脂質源として挙げられます。

あわせて、筋肉の維持のためにタンパク質もしっかり摂る必要があるとされています。肉・魚・卵・乳製品・豆腐などが中心になります。
空腹時のトレーニング
脂質代謝を促す方法として紹介されるのが、空腹状態での軽い運動です。
週1〜2回程度、朝食前にジョグを入れることで、体が脂質をエネルギーとして使う練習になるとされています。
朝のランニングはまさに空腹状態での運動にあたるため、相性が良いとされています。ただし強度を上げすぎると、単に体調を崩すだけなので、あくまで軽い運動にとどめるべきだという指摘もあります。
ちなみにカーボローディング派の私も、朝のランニングは空腹状態で行っています。
フルマラソンを走る上で、脂質代謝を促すことが非常に有効であることは、ファットアダプト派でもカーボローディング派でも変わらぬ事実です。
適応には数ヶ月かかる
ここが一番のポイントですが、体が脂質を効率よく使えるようになるまでには、数週間から数ヶ月かかるとされています。
数日で切り替えられるものではなく、食習慣ごと変えていく必要がある食事法です。レース直前に思いついて試すようなものではない、という点は押さえておくべきでしょう。
最初は体がだるく感じたり、パフォーマンスが落ちたと感じたりすることもあるようです。焦らず、じっくり体の変化を見ながら進めるのが前提とされています。
ちなみに、カーボローディング派の私でも、空腹状態での朝ランを継続してきた結果、今では何も食べずに30km走を行うことができるようになりました。この事実も私がファットアダプトよりカーボローディングを推奨する理由の1つです。

向き不向きがある
向いている人
理論上、ファットアダプトが合いやすいとされているのは、超長距離のウルトラマラソンやトライアスロンなど、非常に長い時間運動を続ける競技の選手です。
エネルギー切れのリスクが競技時間に比例して大きくなるため、脂質という「使い切らない燃料」を持っておくメリットが相対的に大きくなるからです。
また、糖質を摂ると胃腸の調子を崩しやすい人にとっても、選択肢のひとつになり得ます。レース中に糖質のジェルで胃が受け付けなくなるタイプの人には、検討の価値がある理論だと思います。
向かない人
逆に、フルマラソン程度の競技時間であれば、無理に取り入れる必要はないというのが私の考えです。3〜4時間の競技なら、カーボローディングで十分にまかなえる範囲だからです。
糖質は脳の主要なエネルギー源でもあります。日常的に頭を使う仕事をしている人にとって、糖質を極端に減らすことは、練習以外の生活への影響も無視できません。
持病があり食事管理が必要な人(糖尿病や脂質異常症など)は、自己判断で始めるべきではありません。必ず主治医に相談したうえで判断してください。
そして何より、家族と食卓を囲む機会が多い人には、続けにくい食事法だと思います。主食を大きく減らし、脂質中心の献立にするのは、一人分だけ別メニューにするような負担が発生しやすいからです。私が短期集中型のカーボローディングを選んでいる理由のひとつも、実はここにあります。

カーボローディングとの違い
ファットアダプトとカーボローディングは、どちらも「レースを通してエネルギー切れを起こさない」という同じゴールを目指す理論です。違うのは、そこに至るまでの時間軸とアプローチです。
カーボローディングは、レース前3日間だけの短期集中型です。普段の食生活を変える必要がなく、レース前の限られた期間だけ糖質の比率を上げれば実践できます。一方ファットアダプトは、数週間から数ヶ月かけて食習慣そのものを作り変える、長期戦の理論です。
どちらが優れているという話ではなく、どこにエネルギーの余力を持たせるかという発想の違いです。カーボローディングは「タンクを満タンにする」考え方、ファットアダプトは「タンクの燃費を良くする」考え方だと言えます。
私自身はカーボローディング派として2025年12月にフルマラソン3時間2分14秒の自己ベストを更新しています。短期集中で日常生活への影響が少ない点が、今の自分の生活スタイルに合っていると感じています。ただ、これは理論の優劣ではなく、あくまで自分に合ったやり方を選んだ結果だと思っています。

理論として面白いのは間違いない。カーボかファットアダプトかは、白黒つける話じゃないと思う。

結局、自分の体で試してみるしかないってことか。
その通りだと思います。競技時間が長くなるほど、あるいは糖質のジェルが胃に合わないほど、ファットアダプトが有力な選択肢になってくるはずです。
気をつけたいこと
最後に、ファットアダプトを試す場合に注意したい点を5つ挙げます。
- 糖質をいきなりゼロにする
- 運動強度はそのままに食事だけ急に変える
- 持病がある人が自己判断で始める
- 結果が出る前に数日で投げ出す
- 大会直前に初めて試す
ひとつずつ補足します。
① 糖質をいきなりゼロにする
糖質を極端に減らす食事法ではありますが、完全にゼロにするものではありません。目安とされる50g前後という数字にも、野菜や全粒穀物からの糖質は含まれています。
糖質をゼロにしてしまうと、脳のエネルギー不足による頭痛やめまい、集中力の低下といった不調が出やすくなるとされています。特に運動習慣がない状態からいきなり始めるのは避けたほうがよいでしょう。
段階的に糖質を減らしていくのが基本です。急激な変化は体への負担が大きく、長続きしません。

② 運動強度はそのままに食事だけ急に変える
食事だけを変えて、練習強度はこれまで通りというのは、うまくいきにくい組み合わせです。
体が脂質をうまく使えるようになる前に高強度の練習を続けると、単純にエネルギーが足りず、練習の質が落ちてしまいます。適応期間中は、練習強度を一時的に落とすことも検討すべきだとされています。
食事と練習は、常にセットで考える必要があります。食事法だけを切り離して真似すると、思うような結果につながりにくいはずです。
③ 持病がある人が自己判断で始める
糖尿病や脂質異常症など、血糖値や脂質の管理が必要な持病がある方は、自己判断で食事内容を大きく変えるべきではありません。
糖質を極端に減らす食事は、持病によっては症状に大きな影響を与える可能性があります。この記事はあくまで、健康な市民ランナーが調べた内容の紹介であり、医学的な指導ではありません。
持病がある方はもちろん、健康な方でも、大きく食事を変える前には医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

④ 結果が出る前に数日で投げ出す
適応には数週間から数ヶ月かかるとされている食事法です。数日試して「効果がない」と判断するのは、そもそも評価のタイミングとして早すぎます。
一方で、体に明らかな不調(強い倦怠感やめまいなど)が続く場合は、無理に続けるべきではありません。「様子を見る期間」と「体調不良のサイン」は、きちんと分けて考える必要があります。
判断に迷う場合は、自己判断で継続せず、医師に相談したうえで続けるかどうかを決めるのが安全です。
⑤ 大会直前に初めて試す
これが一番やってはいけないパターンです。適応に数ヶ月かかる食事法を、大会直前に初めて試すのは、ぶっつけ本番でレースに臨むようなものです。
体が慣れていない状態で本番を迎えれば、エネルギー不足や体調不良のリスクのほうが大きくなります。試すのであれば、大会から逆算して十分な準備期間を確保してください。
補給食を本番でいきなり試さないのと同じ考え方です。新しいことを試すのは、練習期間中に限るべきです。

まとめ|もう一つの燃料戦略
ファットアダプトは、糖質ではなく脂質を主燃料にすることで、エネルギー切れのリスクを減らそうとする食事法です。
- 脂質を使える体に適応させ、エネルギー切れを防ぐことを狙う食事法
- 糖質は1日50g前後まで大きく減らし、脂質を7割前後まで増やしてエネルギーの大半をまかなうという考え方
- 超長距離競技や、糖質でお腹を壊しやすい人ほど恩恵が大きい
- 適応には数週間〜数ヶ月かかり、大会直前に試すものではない
- 持病がある人は自己判断で始めず、必ず医師に相談を
自分の競技時間や体質に合わせて、カーボローディングとファットアダプトのどちらを軸にするか選べばいいというのが、調べてみて一番強く感じたことです。私自身は今のところカーボローディング派ですが、この理論を知っておいたことで、補給に対する考え方の幅が広がりました。
カーボローディングについて詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてどうぞ。


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